放射線治療品質管理

ご挨拶

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 (公益財団法人)医用原子力技術研究振興財団(以下、医用原子力財団)は、2004(平成16)年4月より,放射線治療用の線量測定器(線量計)の感度の比較校正事業を開始致しました。本事業は,以前の(社)医学放射線学会(JRS)によって行われていた線量計校正システムを基本的に継承し更に発展させたものであり、財団内に設けられた線量校正センターが業務に当たることになりました。以来、校正業務そのものは順調に拡大しており、発足時の状況はその直前のJRSのものとほぼ同等でしたが、2008年の状況はそれを5割程度上回っています。当財団の校正が、線量計ユーザーの皆様にスムースに受け入れられ定着しつつあるものと考え、厚く感謝の意を表します。

 わが国の治療用線量計校正の歴史は1960年代後半に遡ります。当時、60Co照射装置による外部照射治療が立ち上がりつつあり、そのため全国の治療用線量を統一し、また国家標準と結びつけるためJRSの校正システムの活動が始まりました。同システムの実績も当初は少なかったのですが、線量評価の重要性の認識や測定法の統一が進むにつれ規模が拡大し、JRSのような学術団体での運営が不適当になって参りました。この状態を打破すべく、関係者によりいくつかの方法が検討されたのですが、より精度良く、また実施基盤の安定等を考慮し、2次校正機関に相当する線量校正センターを、JRSおよびユーザーの双方に対し第三者的立場にある医用原子力財団に設置する運びとなりました。もとよりJRSのシステムは全国の線量の一元化を目指したものでしたが、その実現が近づくにつれ反ってその役目を終えなければならないとは、皮肉なめぐり合せとしかいいようがありません。やはり時代が新しいシステムを要求したのでしょうか。

 いうまでもなく、線量は、放射線治療において最も重要な物理的指標であります。これを適切にまた正しく患者に投与することが、よい治療成績を上げるために必須であり、ユーザーの皆様の日々の業務にもそのための作業が当然含まれているものと思います。ここで正しくという意味の中には、トレーサビリティの確保が含まれています。計量法でいうトレーサビリティとは、上位の計量標準との繋がりおよび校正の不確かさが明確であることとされています。われわれも、できるだけ国家標準に近く、かつ不確かさの少ない校正定数がユーザーの皆様に提供できるよう努めているところであります。

さて、このように進めてまいりました当財団の校正業務も2009年末で5年が経過し、線量校正センターの事業内容にもいくつかの変更・追加がありました。

第1は、2007年11月より新たに開始したガラス線量計の宅配システムによる出力測定サービスです。これは、外部品質監査(external quality audit)の一つであり、全国の医療機関における放射線治療装置の線量評価が、国内あるいは国際的な基準に一致していることを、外部機関としてチェックすることを目的としています。近年、不幸な線量投与事故の報道などもあって恒久的な外部監査の機運が高まり、当財団としても線量計校正と線量監査は車の両輪であり、第三者的立場での監査は校正業務の一環であると捉え本業務を開始いたしました。当初の対象は基準条件下での出力(校正点吸収線量)のみでしたが、利用施設数も徐々に増加しており、また測定範囲拡大および測定当たりの費用の低減なども実現できました。

第2は、計量法校正事業者登録制度(JCSS)への登録です。JCSSとはトレーサビリティ体系の普及を図り各種の校正機関の能力を判定し保証する制度であります。よって、JCSSの登録事業者として認定されれば、国家標準へのトレーサビリティの確保と校正機関としての技術的能力が的確であることが証明されることになります。数年前より登録認定の準備を進め、JCSS認定機関である製品評価技術基盤機構に申請を行っていましたが、2008年11月に同機構より登録証が交付され、2009年1月より全ての校正結果を、JCSS標章付校正証明書としてユーザー各位のお手元に届けることができるようになりました。ユーザー側としてもJCSS標章付校正証明書によって、より信頼性のある線量評価が保証されることになります。

第3は、水ファントム中での測定による水吸収線量校正定数の直接決定と電離箱・電位計の分離校正です。これらは、校正定数の不確かさの改善とユーザー側での作業の負担軽減を狙ったものであり、現在基礎的な検討を継続しており、近い将来サービス提供できる予定でおります。

 先にも述べたように、治療における線量評価および装置の出力は全国的に同一基準であるということが、放射線治療の臨床および研究の基本です。医用原子力財団線量校正センターの事業も全てユーザーサイドにおけるこれら目標の実現を支えるために行われています。ユーザーおよび関係各位のご理解とご協力を心より願って止みません。今後とも宜しくお願い申し上げます。


2010年3月1日
線量校正センター長 佐方周防



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