中性子捕捉療法(BNCT)

悪性脳腫瘍

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悪性脳腫瘍の治療

 このホームページは特に原子炉で治療の対象となる悪性腫瘍(癌)について書かれています。 現在、中性子捕捉療法という特殊な放射線治療が原子炉を利用した臨床研究として行われています。  ここでは主に悪性神経膠腫(悪性グリオーマともいわれ、神経膠芽腫:Glioblastoma、悪性神経膠腫:Malignant glioma grade3 などがその中に含まれます)について記述します。


 
Q1 悪性神経膠腫とはどのようなものですか?
A1 脳には神経細胞とそれを骨組みのように支える神経膠細胞があります。神経膠腫はその神経膠細胞から発生する腫瘍で正常の脳との境界がはっきりしないため、手術できれいに摘出することが困難な腫瘍です。この中でも良性、悪性のものがありますが悪性の場合は正常の脳の中をかなり離れたところまで腫瘍が浸潤しているので手術だけでなく以下に示す放射線療法や化学治療などの補助療法が必要となります。
 

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Q2 悪性神経膠腫は普通どのように治療するのですか?
A2 通常はまず手術を行い、腫瘍をできる限り多く摘出します。手術の際に得られた組織により最終的な診断名がわかります。その後に放射線治療、化学治療(抗がん剤、その他)を組み合わせて治療を行います。
 

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Q3 悪性神経膠腫の治療は難しいのでしょうか?
A3 悪性神経膠腫は脳という人間にとって極めて重要な臓器に発生し、頭部MRI(Magnetic Resonance Imaging:磁気共鳴画像)検査等で検出された腫瘍の数cm周囲にまで悪性細胞が散らばって(微小浸潤)います。ところが腫瘍を完全に切除するために脳を含めて大きく切開すると強い神経障害が避けられないことが多いため、手術だけで完全に治すことが極めて困難です。また、他のがんや悪性腫瘍に比べて、抗がん剤や放射線が効きにくいのも治療が難しい一因です。
 

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Q4 ほう素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy: BNCT)とは?
A4 現在の標準的な放射線治療法で治すのが困難な悪性神経膠腫という悪性脳腫瘍(しゅよう)のために研究されている従来のものとは異なった放射線治療です。ほう素10Bの薬剤を点滴してから熱中性子線をあてて、悪性神経膠腫を治療します。
 

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Q5 ほう素中性子捕捉療法(BNCT)の原理を教えてください。
A5 BNCTは、腫瘍細胞に取り込まれたほう素10Bと中性子との核反応により発生する強力な粒子線(アルファ線、7Li粒子)によって治療を行います(図1)。用いられる中性子はほう素10Bとの反応が大きな熱中性子をはじめとする低エネルギーの中性子です。

図 1 ホウ素化合物をあらかじめ投与しておき、腫瘍にホウ素が集まったときに熱中性子線を照射すると、ほう素化合物をほとんど取り込まない正常細胞はあまり大きなダメージを受けませんが、ホウ素をたくさん取り込んだ腫瘍細胞では細胞内部でホウ素と熱中性子の核反応が生じ、核反応により発生したアルファ線と7Li粒子が腫瘍細胞のみを殺します。大きな利点は、アルファ線も7Li粒子もおよそ10ミクロンしか飛ばないため、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞のみが選択的に治療できることです。
 

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Q6 通常の放射線治療とBNCTはどこが違いますか?
A6 もっとも大きな特徴を箇条書きにあげます。

(1)X線、ガンマ線(通常の放射線治療)に代えてアルファ線と7Li粒子を用いる
(2)一回(一日)の照射で治療が終了する
(3)正常細胞にあまりダメージをあたえないで腫瘍細胞だけを選択的に破壊する

 以下に少し詳しく説明をします。

  国内の多くの施設で取り入れられている放射線治療(図2)は、X線やガンマ線と呼ばれる放射線を使っています。悪性神経膠腫は広い範囲に微小浸潤しているため、腫瘍細胞を完全に治療するためには広い範囲の正常脳組織に大量の放射線をかける必要が生じます。 強力に治療を行おうとすればするほど微小浸潤のある周りの正常脳組織の障害も避けられないというジレンマがあり、これが治療の限界となっています。

 BNCTで発生するアルファ線と7Li粒子(図1)は、X線やガンマ線と異なり、発生してから止まるまでの距離(飛程)が短く(ほぼ細胞1個分の長さ)、腫瘍細胞で発生したアルファ線も7Li粒子も周囲の正常脳組織に与える影響は小さいとされています。また、BNCTで発生するアルファ線と7LiはX線やガンマ線に比べて生物学的な効果が2~3倍程度高いとされており、治療効果が高いことが期待されます。

図 2 増感効果のない放射線治療では近接する腫瘍細胞と正常細胞はほぼ同じ物理的なダメージを受け、放射線感受性が同じであればほぼ同じダメージを受けます。したがって正常脳の耐えられる線量までの放射線をかけて腫瘍部だけの治療を行おうとします。
 

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Q7 治療日数とBNCTのための検査について教えてください。
A7 治療日数は1日ですが、最低でも前後2週間程度の入院が必要となります。BNCTに必要な検査は頭部MRIをはじめ、通常の治療に必要な検査が必要ですが、予定が決まった時点で治療計画のために詳細なMRI追加検査が必要です。
 

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Q8 現在までの実績や治療成績はいかがですか?
A8 国内では日本原子力研究開発機構、京都大学原子炉実験所のほか、アメリカブルックヘブン国立研究所、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、欧州連合グループ、ヘルシンキ大学、チェコ原子力研究所、スウェーデンStudsvik研究所、などでBNCTが行われています。国内での治療実績が最も多く、京都大学原子炉実験所、東京都市大学原子炉研究所などを用いて300名程度の治療が行われてきています。

日本原子力研究開発機構の新しいBNCT施設での治療は11例行われ、まだ、研究の途中なので最終的な結果は出ていませんが、初期の治療反応は通常の放射線治療の成績を上回りつつあります。

画像をクリックすると拡大されます。  
日本原子力研究開発機構の施療室 日本原子力研究開機構発の照射室
(モデルを使った照射の状況)
 

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Q9 どのような病気が対象になるのでしょうか?
A9 最も研究が進んでいるのは脳腫瘍のうち、脳細胞から発生する悪性神経膠腫(Malignant glioma)です。これには神経膠芽腫(Glioblastoma)や退形成性神経膠腫(Anaplastic astrocytoma)などが含まれます。原則的にこれまで放射線治療や化学療法を受けていない症例が適していますが、再発症例についても新しく研究を開始しております。また、悪性髄膜腫に対する治療も開始されています。これらの中でBNCTは比較的表面にあるものであまり広がっていないものが適応となります。

皮膚の悪性黒色腫や頭頚部癌などの研究も開始されていますので、それぞれ実施責任者までお問い合わせください。

内臓の癌から転移してきた転移性脳腫瘍は適応とならず、他の放射線治療が適していますので担当医あるいは本ホームページの連絡先までお問い合わせください。
 

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Q10 治療を受けるにはどこに連絡すればよいでしょうか。
A10 国立香川小児病院
〒765-0003 香川県善通寺市善通寺町2603
  香川小児病院 院長 中川 義信
  TEL:0877-62-0885  FAX:0877-62-5384
 E-Mail:ynakagawa@kagawasyoni.hosp.go.jp
  【照射の場所】
  京都大学原子炉実験所または日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター

筑波大学臨床医学系脳神経外科
  〒305-8575 茨城県つくば市天王台1-1-1
  筑波大学臨床医学系脳神経外科 松村 明
  TEL:0298-53-3220  FAX:0298-53-3214
 E-Mail:a-matsumur@md.tsukuba.ac.jp
  【照射の場所】
  日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター
 

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Q11 BNCTを受けるのにどのような条件がありますか?
A11 施設によって若干異なりますが、18~70才の悪性神経膠腫にかかられた方で、合併症や多臓器の大きな異常がないことなどがあげられます。実際にBNCTが行えるかどうかはMRIによって判断していますので、担当医とご相談ください。
 

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Q12 脳腫瘍(悪性神経膠腫)、皮膚悪性黒色腫以外のがんでもBNCTを行えますか?
A12 脳腫瘍では悪性神経膠腫のほかに悪性髄膜炎黒色腫の脳転移なども行っています。皮膚悪性黒色腫ですが、皮膚以外にも粘膜(口腔内など)についても行っています。頭頚部がんは最近飛躍的に症例が増えてきています。

肝癌、肺癌、中皮腫についても臨床研究を開始しています。
 

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Q13 インフォームドコンセント、治療費用はどのようになっていますか?
A13 インフォームドコンセントについてはそれぞれの施設において、倫理委員会の承認を得て臨床研究がなされており、患者さんの不利益にならないように配慮されています。

治療費用については、現在この治療法は保険医療の対象になっておらず、臨床研究として行われます。原則的に臨床研究にかかる費用は研究費でカバーされますが、それぞれの施設により若干違いがありますのでお問い合わせください。
 

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Q14 考えられる副作用はありますか?
A14 中性子捕捉療法は放射線治療の一種であり、どの放射線治療でも放射線による正常 組織の障害が起こる可能性があります。中性子捕捉療法でも放射線障害が急性期、あ るいは1-2年後以降に晩発性に起こる可能性があります。

また、副作用とは違いますが他の治療法でも同じですが、腫瘍の再発する可能性は ありますので、治療後も定期的な通院が必要になります。

その他、それぞれの部位や腫瘍の種類によって病状が異なる可能性がありますので、 中性子捕捉療法を受ける前に主治医から詳しく説明があります。この時にわからない ことは良く聞いてください。

また、中性子捕捉療法後も定期的に主治医に受診していただき、上記のようなこと が起こった場合にはそれぞれについてさらなる治療や対処法について相談ができます。
 

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Q15 中性子捕捉療法は病院の中で受けられないのですか?
A15 現在のところ、中性子捕捉療法に用いられる熱中性子、熱外中性子は研究用原子炉からしか得られません。それぞれの原子炉においては手術や麻酔、治療計画用のコンピューターシステムを導入し、病院と同等の治療が受けられるように整備されています。

将来的には加速器による中性子捕捉療法が研究されており、病院内での治療も計画されています。
 

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Q16 BNCTの情報が見られるリンク先
A16 日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター
京都大学原子炉実験所
東京都市大学原子力研究所
 

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