中性子捕捉療法(BNCT)

悪性黒色腫

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悪性黒色腫の治療

このホームページは特に原子炉の放射線を用いて治療が可能な悪性黒色腫(メラノーマ)を対象に書かれています。現在、中性子捕捉療法という特殊な放射線治療が原子炉を利用した臨床研究として行われています。

 

 
Q1 悪性黒色腫(メラノーマ)とはどのようなものですか?
A1 皮膚は、最外層の表皮とその下層の真皮および最下層の皮下脂肪織から作られています。この治療法で対象となる色素細胞は表皮に存在し、メラニンを作ります。表皮は90%以上が角化細胞と呼ばれ、フケになって落ちていく細胞です。色素細胞で作られたメラニンは角化細胞を分け与えられ、角化細胞の核の上に帽子のように分布しています。紫外線から角化細胞を護っているのです。つまり、メラニンは紫外線の害から皮膚を守る大切な役目を果たしています。

この色素細胞が癌になったものが悪性黒色腫(メラノーマ)で、ホクロのがんとも呼ばれることがあります。皮膚のがんとしては少ないのですが、患者さんが気付いた時にはすでに遠くの臓器に転移している可能性が高い(50%)怖い腫瘍です。悪性黒色腫(メラノーマ)には色々なタイプがありますが、日本人は足底や手のひらにできる悪性黒色腫(メラノーマ)が多く、白人ではしばしば体幹にできます。
 

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Q2 悪性黒色腫は普通どのように治療するのですか?
A2 通常はまず外科的手術を行います。早期(専門的にはメラノーマ病期Ⅰ、腫瘍の厚さが0.75mm以下)に発見できれば外科手術により9年生存率は100%、病期Ⅱで腫瘍の厚さが40mmまでで転移がなければ90%くらいの治癒率が望めます。しかし、発見が遅れて癌が進行(リンパ節や他の臓器に転移)すると治療は非常に難しくなります。

外科治療に化学療法、免疫療法などを加えますが病期Ⅲでリンパ節転移があれば治癒率は60%以下に低下します。また、他の臓器に転移がある場合には約25%以下です。悪性黒色腫(メラノーマ)現在の標準的な放射線治療があまり効かない癌です。このため転移した悪性黒色腫(メラノーマ)ど限られた他に有効な治療法がない患者に対して行われるだけです。
 

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Q3 悪性黒色腫(メラノーマ)の治療は難しいのでしょうか?
A3 先に述べたように初期の悪性黒色腫(メラノーマ)は手術でかなり良く治ります。病期Ⅰでは原発巣の腫瘍部の周囲から1cm外側まで切除します。問題は、悪性黒色腫(メラノーマ)が進行している場合です。腫瘍の3cm外側まで切除しますが、場合によっては指、手、足、腕、下肢を切断しなければならないこともあります。この場合、腫瘍は治っても日常生活に支障を来すことが問題です。また、顔の悪性黒色腫(メラノーマ)では、大きく切除すると口、鼻、目の機能や美容上の大きな障害を残すこともあります。また、腫瘍がいったん転移すると治療は非常に困難になります。他のがんや悪性腫瘍に比べて、抗がん剤や放射線が効きにくいのも治療が難しい一因です。
 

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Q4 ほう素中性子捕捉療法(Boron Neutron Capture Therapy: BNCT)とは?
A4 現在の標準的な放射線治療法で治すのが困難な悪性黒色腫の治療のために開発された放射線治療法です。悪性黒色腫(メラノーマ)に集まるほう素(10B)の薬剤を点滴してから熱中性子線をあてて、悪性黒色腫を治療します。
 

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Q5 ほう素中性子捕捉療法(BNCT)の原理を教えてください。
A5 BNCTは、腫瘍細胞に取り込まれたほう素10Bと中性子との核反応により発生する強力な粒子線(アルファ線、7Li粒子)によって治療を行います(図1)。用いられる中性子はほう素10Bとの反応が大きな熱中性子をはじめとする低エネルギーの中性子です。

図 1 ホウ素化合物をあらかじめ投与しておき、腫瘍にホウ素が集まったときに熱中性子線を照射すると、ほう素化合物をほとんど取り込まない正常細胞はあまり大きなダメージを受けませんが、ホウ素をたくさん取り込んだ腫瘍細胞では細胞内部でホウ素と熱中性子の核反応が生じ、核反応により発生したアルファ線と7Li粒子が腫瘍細胞のみを殺します。大きな利点は、アルファ線も7Li粒子もおよそ10ミクロンしか飛ばないため、正常細胞を傷つけることなく腫瘍細胞のみが選択的に治療できることです。
 

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Q6 通常の放射線治療とBNCTはどこが違いますか?
A6 もっとも大きな特徴を箇条書きにあげます。

(1)X線、ガンマ線(通常の放射線治療)に代えてアルファ線と7Li粒子を用いる
(2)一回(一日)の照射で治療が終了する
(3)正常細胞にあまりダメージをあたえないで腫瘍細胞だけを選択的に破壊する

以下に少し詳しく説明をします。

国内の多くの施設で取り入れられている放射線治療(図2)は、X線やガンマ線と呼ばれる放射線を使っています。悪性神経膠腫は広い範囲に微小浸潤しているため、腫瘍細胞を完全に治療するためには広い範囲の正常脳組織に大量の放射線をかける必要が生じます。 強力に治療を行おうとすればするほど微小浸潤のある周りの正常脳組織の障害も避けられないというジレンマがあり、これが治療の限界となっています。

BNCTで発生するアルファ線と7Li粒子(図1)は、X線やガンマ線と異なり、発生してから止まるまでの距離(飛程)が短く(ほぼ細胞1個分の長さ)、腫瘍細胞で発生したアルファ線も7Li粒子も周囲の正常脳組織に与える影響は小さいとされています。また、BNCTで発生するアルファ線と7LiはX線やガンマ線に比べて生物学的な効果が2~3倍程度高いとされており、治療効果が高いことが期待されます。

図 2 増感効果のない放射線治療では近接する腫瘍細胞と正常細胞はほぼ同じ物理的なダメージを受け、放射線感受性が同じであればほぼ同じダメージを受けます。したがって正常脳の耐えられる線量までの放射線をかけて腫瘍部だけの治療を行おうとします。
 

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Q7 治療日数とBNCTのための検査について教えてください。
A7 治療日数は1日ですが、治療前1週間、治療後1~2週間程度の入院が必要となります。BNCTに必要な検査は通常の治療に必要な検査と同じですが、予定が決まった時点で治療計画のために詳細なMRI追加検査が必要です。
 

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Q8 現在までの実績や治療成績はいかがですか?
A8 国内では京都大学原子炉実験所で悪性黒色腫(メラノーマ)のBNCTを行っていますが、これまで22例(平成14年3月現在)の治療を行っています。まだ、研究の途中なので最終的な結果は出ていませんが、初期の治療反応は通常の放射線治療の成績を上回っています。
 

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Q9 どのような悪性黒色腫(メラノーマ)対象になるのでしょうか?
A9 原則的にはこれまで治療を受けていない症例が適していますが、前にも述べたように悪性黒色腫(メラノーマ)の治療は外科治療が基本です。自分の意志で手術を受けたくない方、心臓、肝臓や腎臓などの機能が悪く手術することが困難な方、手術をすると機能的にも美容的にも大きな障害が生じる可能性がある方で同意が得られた方を対象としています。

一度他の方法で治療して再発した場合についても、その部分を治療することで延命効果が得られる場合は対象とします。
 

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Q10 放射線の害はないのでしょうか?
A10 必要な場所以外には中性子があたらないようにコリメータを使いますが、中性子を当てる部分(照射野といいます)に含まれる腫瘍周囲の皮膚には放射線があたりますので、障害があります。治療後に軽度~中等度の炎症を起こしますが、わずかな色素沈着を残して治ります。  放射線によって、白血球数が少なくなることがありますが、従来の抗癌剤による治療よりもずっと軽度です。

照射野以外の全身にも放射線が当たりますが、その量は極わずかです。放射線を浴びた後の長期的な害として癌の発生がありますが、この程度の量では実際に癌が発生したとの報告はありません。また、仮に癌が発生するとしても放射線を浴びてから10~20年後ですので、まず今ある癌を治すことが先決と考えます。
 

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Q11 治療を受けるにはどこに連絡すればよいでしょうか。
A11 下記にご連絡ください。
川崎医科大学・放射線科(治療)教室
〒701-0192 倉敷市松島577 川崎医科大学・放射線科(治療)教室
平塚 純一 教授
TEL:086-462-1111  FAX:086-462-1199
 

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Q12 インフォームドコンセントと治療費用はどのようになっていますか?
A12 BNCTはそれぞれの施設において、倫理委員会の承認を得て臨床研究がなされており、患者さんの不利益にならないように配慮されています。主治医およびBNCT担当の医師から、十分な説明を聞いた後で治療をうけるかどうか、ご自身で判断して同意書を提出して下さい。なお、同意書を提出した後のどの段階でも同意を撤回することができます。

現在この治療法は保険医療の対象になっておらず、臨床研究として行われます。原則的に臨床研究にかかる費用は研究費でカバーされますが、それぞれの施設により若干違いがありますのでお問い合わせください。
 

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Q13 考えられる副作用はありますか?
A13 先に述べたように放射線による皮膚や血液細胞など正常組織の障害が起こる可能性があります。照射後2週間くらいから皮膚の炎症、びらんが起こりますが、一ヵ月程度で治ります。治療1~2年後以降に皮膚が萎縮したり硬くなったりする可能性がありますが、これまでの22例の治療経験では問題になる障害は起こっていません。また、患者さんの腎機能が悪い場合、ホウ素化合物点液により腎機能が悪化する可能性がありますので、治療前に十分チェックをします。

また、副作用とは違いますが他の治療法でも同じですが、腫瘍が再発する可能性はありますので、治療後も定期的な通院が必要になります。

その他、それぞれの部位や腫瘍の種類によって異なる可能性がありますので、中性子捕捉療法を受ける前に主治医から詳しく説明があります。この時にわからないことは良く聞いてください。
 

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Q14 中性子捕捉療法は病院の中で受けられないのですか?
A14 現在のところ、中性子捕捉療法に用いられる熱中性子、熱外中性子は研究用原子炉からしか得られません。現在、京都大学原子炉実験所と日本原子力研究開発機構の二カ所にあります。それぞれの原子炉においては手術や麻酔システム、治療計画用のコンピューターシステムを導入し、病院と同等の治療が受けられるように整備されています。

将来的には加速器による中性子捕捉療法が研究されており、病院内での治療も計画されています。
 

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Q15 BNCTの情報が見られるリンク先
A15 日本原子力研究開発機構・東海研究開発センター
京都大学原子炉実験所
東京都市大学原子力研究所
 

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