普及啓発

粒子線がん治療等に関する施設研究会

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粒子線(重粒子線・陽子線)がん治療は、高精度な治療技術に求められる所要の機器やシステムをはじめ、施設全体の設計、機器配置、建設、および遮蔽等さまざまな関連分野において、研究開発および技術的対応、規格基準の整備など、適確に対応していくことが求められております。さらにこれらは、実際の医療の臨床現場での治療技術とのインターフェイスが重視され、システムとしての調和や品質管理も重要となっております。
 「粒子線がん治療等に関する施設研究会」は、粒子線治療施設建設の視点から、 先行施設の実地調査を行うとともに、実際に治療に携わっている専門家から講義を受け、現状を把握した上で、普及に係る課題・対策の分析・ 検討に資するとともに、関係組織相互の情報の共有化をはかり、専門知識を有する人材育成をはじめ関連産業の育成・発展に寄与することを目的に実施しております。
 研究会会員は、設計、建設、装置製造、情報処理、保険等幅広い関連分野の技術者、研究者および実務者で構成され、国内外における粒子線がん治療等に関する医療情報、研究・技術開発動向、ならびに関連法令や技術基準の動向などの現状および将来見通しや課題・対策などに関して、講演および関連施設の見学および意見交換を行っております。

【 主査】

遠藤 真広 公益財団法人 医用原子力技術研究振興財団 常務理事



【最新の活動報告】 会員登録についてはこちらをご確認下さい

平成30年度粒子線がん治療等に関する施設研究会」第1回研究会


 「平成30年度第1回施設研究会」は平成30年5月26日(土)社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院(北海道札幌市)にて札幌高機能放射線治療センター - SAFRA(サフラ) - の見学会として開催しました。
 当日は、はじめに札幌高機能放射線治療センター センター長 岸 和史 先生と同センター中村大隆先生より札幌高機能放射線治療センターのご紹介および同センターが目指す医療についてご説明があった後、同センターを見学させていただきました。

 中村先生のご講演では、超電導を用いて加速器を小型化し(重量50トン)、また、ガントリーの小型化をはかり(重量90トン)、施設全体(遮蔽含む)をテニスコートに入るサイズとしたことが強く印象に残りました。また、岸先生はトモセラピー、サイバーナイフさらにIVRを組み合わせることにより、今まで見放されていた末期の患者の生命予後を大幅に改善できることを、実例を多数あげて強調されました。今後は、陽子線をこのためのツールに加えるとともに、放射線治療と相乗的な効果を持つ免疫療法(オプジーボなど)の併用を積極的に進めていきたいとのことでした。

プロテウスワン(ProteusOne) 病院外観

<札幌高機能放射線治療センターの特徴>
・国内15番目(北海道3番目)の陽子線がん治療施設
・総合病院に附属する粒子線施設
・陽子線、トモセラピー、サイバーナイフを全て有する日本で唯一の医療機関
・世界最高水準の最先端の治療装置(スキャニング照射、強度変調陽子線治療、画像誘導陽子線治療)
・IBA社の最新機種プロテウスワン(ProteusOne)を導入

<施設概要>
敷地面積:12,147.93㎡、建築面積:6,666.05㎡(治療棟771.46㎡)、延べ床面積:26,659.82㎡(治療棟1,772.17㎡)、高さ30.226m(治療棟13.0m)、治療棟:地上3階、鉄筋コンクリート鉄骨造(1F陽子線、サイバーナイフ、診察室、2Fトモセラピー、治療計画室、診察室、3Fスタッフエリア)治療室:225°回転ガントリー、病院棟:地上7階、地下1階、鉄筋コンクリート造(手術室8室, 術中3T MRI, Hybrid手術室, ダヴィンチ, CT 4台, MRI 2台, 血管撮影装置3台, PET-CT, SPECT, RI製造用サイクロトロン, ホットラボ室など)、「がん」「脳卒中」「心臓病」の三大疾病と運動器疾患を中心とした高度急性期の病院として最新の診断機器と治療設備を整備し、救急医療にも対応できる体制を構築している。

<粒子線装置概要>
加速器:シンクロサイクロトロン、イオン源:PIG source、出力エネルギー:230MeV、磁場強度:5.7T、照射エネルギー:100~230MeV、ビーム移送系:225°回転ガントリー
<治療装置概要>
最大照射野:アイソセンタ面で200×240㎜、線量率:飛程270㎜で1リットル(10㎝角)の照射体積に対して2Gyを120sec以下、レンジシフタ:水等価厚78㎜、治療台:6軸スカラー型ロボット、X線撮像システム、X線管及びFPD位置決め用 斜交2軸

<整備工程概要>
建物設計管理:竹中工務店北海道一級建築士事務所
建物施行者:竹中工務店・田中組 建設共同企業体
建物設計期間:2013年9月~2015年1月
建物建設期間:(第一期):2015年2月~2016年9月
建物建設期間:(第二期):2017年2月~2017年9月
装置製作:Ion Beam Applications SA(IBA ベルギー)
装置製造販売:セティ株式会社
装置設計出荷工期:2014年5月~2017年3月
装置搬入:2017年3月~2017年4月
装置据付調整:2017年5月~2018年2月
装置現地試験:2018年3月

<今後の予定>
クリニカルコミッショニング:2018年4月~
治療開始予定:2018年7月

<運営形態>
セティ株式会社:装置設備、保守等担当
社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院:医療、運営担当

<想定年間治療数>
想定年間治療数:500人
頭頚部腫瘍 150人(30%)、肺腫瘍 150人(30%)、骨盤肉腫(30%)、小児がん 50人(10%)

<高速スキャニング法>
PROTEUS ONEは、患者様への最適な陽子線治療を提供するため、最新の照射技術であるスキャニング法を採用している。スキャニング法は、細いビームを用いて3次元的に病巣を塗りつぶす様に照射する。この技術により、複雑な形状をした腫瘍にもフィットした最適な線量投与が可能になる。また、患者様毎の照射器具(ボ―ラス・コリメータ)が不要になるため、ARTが実施しやすくなると共に、照射装具作成や放射性廃棄物処理のコスト軽減にも繋がる。

 社会医療法人孝仁会 北海道大野記念病院は、現在(2018年5月1日)放射線障害防止法施設検査を合格しコミッショニングを実施しているところであり、2018年7月1日より治療開始の予定。粒子線治療のみならず高精度エネルギー放射線治療、および放射線生物学的治療を含むバランスのとれた総合的で最先端のがん治療の提供を目指す。



「平成29年度粒子線がん治療等に関する施設研究会」第3回研究会


「平成29年度第3回施設研究会」は、平成30年2月15日(木)フクラシア八重洲(東京都中央区)にて講演会として開催しました。

 当日は、はじめに当研究会主査 遠藤真広から挨拶があった後、筑波大学附属病院 陽子線治療センター部長 櫻井英幸氏より『日本におけるがんの陽子線治療』について、また、国立研究開発法人 量子技術研究開発機構 放射線医学総合研究所 臨床研究クラスタ長 鎌田 正 氏より『重粒子線がん治療の新たな展開―量子メス開発』について講義がありました。

筑波大学附属病院
陽子線治療センター部長 櫻井英幸 氏
国立研究開発法人 量子技術研究開発機構
放射線医学総合研究所
臨床研究クラスタ長 鎌田 正 氏

『日本におけるがんの陽子線治療』

筑波大学附属病院 陽子線治療センター部長 
櫻井英幸

世界の粒子線治療施設数は、欧州、アジア、北米を中心に約80箇所存在すると報告されており、増加傾向にあります。 その内17箇所は日本に存在し、日本は粒子線治療の受けやすい地域と言えるでしょう。 日本の粒子線治療患者数は年間約5,000人弱、その内約30%が前立腺癌で、次に肝臓癌、頭頚部腫瘍、肺癌と続きます。 重粒子線治療施設の建設も日本を中心に増えています。 また、陽子線治療が保険適用となっている国はイギリス、アメリカ、オランダ、フランス、スイス、カナダ、韓国等があります。

―日本での体制―
2016年4月から20歳未満の小児腫瘍への陽子線治療および切除非対応の骨軟部腫瘍への重粒子線治療が保険収載されました。 その他の疾患は主に先進医療として治療が行われています。日本放射線腫瘍学会は以下の4つの取り組みにより、 各施設の質を担保しつつ評価できる体制を作りました。
①各疾患のシステマチックレビューを実施・公表 
②各疾患の多施設後ろ向き研究を実施・公表 
③重点的な評価対象の前向きの臨床試験(先進B)を実施
④全国共通の治療法を用いた前向き全例登録(先進A)を実施

―保険収載された疾患―
『小児腫瘍への陽子線治療』
放射線治療は小児腫瘍の救命には必須でありますが、小児は骨成長、知能発達障害、内分泌臓器等、放射線の影響を受けやすく、また、X線治療による二次がん発症が国際的に問題になっていました。合併症が出た場合、高額の医療費が一生かかるといった事もあります。 陽子線治療は照射される正常組織の体積が少ないので、成長障害が避けられます。小児の治療に良いと言われている所以は副作用が少ない事で、陽子線治療は小児に最適な放射線治療法です。将来、若年世代にも保険適用となるよう期待して、小児およびその上のAYA世代の腫瘍に対する陽子線治療ガイドラインを作成しているところです。
『骨軟部腫瘍の重粒子線治療』
骨肉腫、軟骨肉腫の手術可能な症例の5年生存率と手術不能例(今まで治癒しなかった例)の重粒子線治療の生存率が同等という結果が出ています。つまり、手術できない(治癒の希望がない)症例に対し手術と同等に生存率を出しているという解釈ができます。

―保険適用の拡大―
厚生労働省は前立腺癌や頭頸部癌の一部に2018年4月から公的医療保険を適用する方針を決め、2018年1月17日、中央社会保険医療協議会で承認されました。
  ●切除不能骨軟部腫瘍(陽子線)・・・・・・・X線と比較して優位性が示された
  ●頭頚部非扁平上皮癌(陽子線/重粒子線)・・X線と比較して優位性が示された
  ●前立腺癌     (陽子線/重粒子線)・・X線と同等性が示された
保険収載の候補に入っていた肝癌は、X線に対する優位性を示すことができなかったため今回は承認されませんでしたが、肝癌診療ガイドラインの改定が2017年に行われ、他の局所療法の適応が困難な肝細胞癌に対して粒子線治療を行ってよいことになりました。先進医療Bが進行中です。

―粒子線治療の今後―
 小児がんなど稀少疾患に対応できる病院は多くはありませんので、センター化、学会間・施設間の連携が大切です。また、臨床的エビデンスの質と量を高めることにより、先進医療会議や厚生労働省等から評価されることになります。今後の粒子線治療について、きちんと議論して進めていくことが重要です。装置の小型化、低コスト化等も期待されています。

『重粒子線がん治療の新たな展開―量子メス開発』

国立研究開発法人 量子技術研究開発機構 
                   放射線医学総合研究所臨床研究クラスタ長 鎌田 正

―これまでの経緯―
  1984年に始まった重粒子線治療計画は10年を経て、1994年より放射線医学総合研究所において重粒子線がん治療の臨床試験が開始され、さらに10年後に先進医療としてスタートし、2003年~2016年の13年間、陽子線治療・重粒子線治療により何万人もの治療を行いました。先進医療は保険収載の是非について一定期間で結論を出すという考え方に基づいています。保険収載は大変難しい状況でしたが、粒子線治療全体の保険収載を目指すのではなく、先ず個別の疾患ごとに目指す事で展望が開けてきました。

―保険収載に至るまでの状況―
放射線医学総合研究所に続き、2002年、兵庫県に重粒子線施設が開設された後、群馬県、佐賀県、神奈川県に合わせて5施設が開設されました。陽子線治療施設と比べて施設数は少ないのですが施設毎の治療数は約2倍になります。2018年に大阪府、2020年には山形県にも開設される予定です。重粒子線治療の保険収載に向けた取り組みとして、2014年に国内全ての重粒子線治療施設が集まり多施設共同研究グループ(J-CROS; Japan Carbon-ion Radiation Oncology Study Group)を設立しました。J-CROSでは、データベースの構築(放医研で構築したデータベースに国内で行われる重粒子線治療の全症例(保険適応、先進医療、臨床試験など)を登録)、技術面の協力の緊密化、臨床研究の実施、治療の標準化等を行っています。

―保険収載後の重粒子線治療の状況―
  2016年4月、切除非適応骨軟部腫瘍が保険収載されました。収載後、治療件数は1.5~2倍に増加しています。頭頚部腫瘍は病態ごとに後ろ向きデータの論文化等を行い、既存X線治療に比較して優位性が示されたということが評価されて2018年4月より保険収載となる予定です。前立腺癌もX線治療と同等性が示されたことで、同じく2018年4月より保険収載となる予定です。2013年までは、この3疾患(骨軟部腫瘍・頭頚部腫瘍・前立腺癌)を合わせた治療数が全体の約50%だったのに対し、2016年に骨軟部腫瘍が保険収載された後は、この3疾患を合わせた治療数は70%を超えました。特に最近では前立腺癌の治療数が増え、全体の約50%を占めています。

―今後の課題―
既存施設―保険収載されたことにより、施設への収入の減少が考えられます。収入減による施設運営への影響評価が求められます。
新規施設―国内で新規施設を作る場合は、新たなビジネスモデルを模索する必要も出てくるでしょう。
患者さん―現在の日本の医療財政を考えると、民間保険の利用や自由診療も選択肢に入れる等により、医療技術の恩恵を享受する可能性が広がるのではないでしょ うか。
臨床―安全でかつ効果的でより効率的な治療の実現を目指します。照射の回数を、より減らし、治療期間もさらに短くできるよう日々研究を続けています。そのためには、人材の育成も大変重要です。 装置開発者―海外展開も視野に入れ、より効率的で良い装置を開発していただくよう、期待しています。

―量子メスの開発―
 放射線医学総合研究所では治療高度化に向けて、多種量子ビーム混合照射(IMPACT)の研究を開始しています。重粒子線の特徴である大きな生物効果を最大限生かすため、LETにより腫瘍部位を塗り分けようというものです。また、量研機構の一員として再発足したので、量研機構の持つ研究資源(レーザー加速、超電導技術)などを活用して、小型・低コストの第4、5世代の重粒子線治療装置の開発にも取り組んでいきます。



【これまでの主な活動内容】

開催日・会場

事業内容

報告書

施設見学会

平成29年12月2日

公益財団法人 大阪重粒子線がん治療財団(大阪府大阪市)

施設見学会

平成29年5月20日

社会医療法人財団 慈泉会 相澤病院(長野県松本市)

講演会

平成29年2月8日
フクラシア東京ステーション

「世界の重粒子線施設の現状」
(放射線医学総合研究所 野田 耕司 氏)
 「日建設計における重粒子線がん治療施設設計の歩み」
(株式会社 日建設計 冨田彰次 氏)

施設見学会

平成28年12月17日

社会医療法人 禎心会 札幌禎心会病院(北海道札幌市)

施設見学会

平成28年06月04日

一般財団法人脳神経疾患研究所附属総合南東北病院(福島県郡山市)

施設見学会

平成28年03月10日

国立研究開発法人 放射線医学総合研究所(千葉県千葉市)

講演会

平成28年02月05日
フクラシア東京ステーション

「米国における日立の粒子線治療施設普及状況」 
(株式会社日立製作所 藤崎雄滋郎 氏)
「加速器BNCTの普及状況」 
(筑波大学 熊田博明 氏)

施設見学会

平成27年10月16日

一般財団法人津山慈風会 津山中央病院(岡山県津山市)

講演会

平成27年02月09日
フクラシア東京ステーション

「粒子線治療防護に関するICRP Publication」 
(放射線医学総合研究所 赤羽恵一 氏)
「世界の重粒子線がん治療施設の現状と今後の見通し」 
(放射線医学総合研究所 北川敦志 氏)

施設見学会

平成26年11月10日

神奈川県立がんセンター (神奈川県横浜市)

施設見学会

平成26年06月03日

京都大学原子炉実験所 (大阪府泉南郡熊取町)

講演会

平成26年02月05日
日本橋サンスカイルーム

「粒子線治療施設の遮蔽計算」
(高度情報科学技術研究機構 仁井田浩二 氏)
「粒子線治療施設における放射化物」
(放射線医学総合研究所 米内俊祐 氏)

施設見学会

平成25年10月22日

北海道大学陽子線治療施設(北海道札幌市)

施設見学会

平成25年05月10日

九州国際重粒子線がん治療センター(佐賀県鳥栖市)

施設見学会

平成24年11月13日

慈泉会相澤病院陽子線治療センター(長野県松本市)

施設見学会

平成24年02月17日

名古屋市立西部医療センター(愛知県名古屋市)

施設見学会

平成23年12月04日

財団法人 メディポリス医学研究財団 がん粒子線治療研究センター
(鹿児島県指宿市)

講演会

平成23年11月07日
日本消防会館

「国立がん研究センター東病院の陽子線治療施設運用について」
(独立行政法人 国立がん研究センター東病院 西尾禎冶 氏)
「兵庫県粒子線医療センターの陽子線・炭素線施設運用について」
(兵庫県粒子線医療センター 須賀大作 氏)

講演会

平成23年07月25日
日本消防会館

「PTCOGの歴史」(財団法人 原子力安全技術センター 河内清光 氏)
「粒子線治療と歩んだ30年と今後の展望について」
(元 独立行政法人放射線医学総合研究所 辻井博彦氏)

研究会

平成23年03月03日

放射線医学総合研究所重粒子医科学センター新治療研究棟の視察
講演 「粒子線治療施設の放射線安全管理システム―インターロックシステム、モニタリングシステムについて-」

講演会

平成22年08月23日
日本消防会館

「2025年における日本の高齢者肺癌の診療戦略 -放射線と外科の役割変化-」
(放射線医学総合研究所 宮本忠昭 氏)
(放射線医学総合研究所 飯沼  武 氏)
「重粒子線がん治療等の先進医療の医療経済的評価」
(東京医科歯科大学 川渕孝一 氏)

施設研究会

平成22年05月07日

福井県陽子線治療センター(福井県福井市)

講演会

平成21年11月19日
日本航空会館

「重粒子線がん治療の現状」
(独立行政法人 放射線医学総合研究所 鎌田正 氏)
「PTCOG(ハイデルベルク開催)への参加報告」
(独立行政法人 放射線医学総合研究所 北川敦志 氏)
「医療用加速器へのエネルギー貯蔵装置の適用について」
(国立大学法人 筑波技術大学 佐藤晧 氏)

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