放射線治療品質管理
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A. 蛍光ガラス線量計システムによる吸収線量測定手順

ガラス線量計について

蛍光ガラス線量計は、ラジオフォトルミネセンス(Radiophotoluminescence:RPL) 現象を利用した固体線量計です。銀イオンを含有した銀活性リン酸塩ガラス素子に放射線を照射すると、RPL中心が形成されます。このRPL中心は紫外線照射により励起され、安定状態に戻るときにオレンジ色のRPLを発光します。この発光量は吸収線量に比例しており、読み取り装置で発光量を読み取ります。

放射線の照射によって形成されたRPL中心は非常に安定しているため、蛍光ガラス線量計は紫外線や読み取り操作等による消滅がなく、フェーディングの影響が極めて小さいなど優れた特性を持ちます。蛍光ガラス線量計はTLDと異なり、何度でも繰り返し読み取りが可能です。安定状態にあるRPL中心は、アニール処理で消失するため、繰り返し使用が可能です。

蛍光ガラス線量計システム

蛍光ガラス線量計素子蛍光ガラス線量計素子
  • 蛍光ガラス線量計素子: GD-302M (旭テクノグラス㈱製)
  • 読み取り装置:FGD-1000 (旭テクノグラス㈱製)

蛍光ガラス線量計素子は、直径1.5mmφ、長さ12mmの蛍光ガラス棒状素子(grass rod dosimeter: GRD)を使用しています。
GRDには3桁のIDが刻印されています。(写真参照)

A-1. アニール処理

蛍光ガラス線量計素子に蓄積した線量を消去して初期状態に戻すために、400℃の高温下で1時間アニール(熱処理)を行います。 アニール処理により、蛍光ガラス線量計素子は繰り返し使用することが出来ます。

A-2.アニール確認

アニール処理後に、蛍光ガラス線量計素子が初期状態に戻ったことを読み取り装置で確認します。

A-3.校正照射

施設にお送りするIMRT郵送調査セットには、蛍光ガラス線量計素子ケースがあり、測定の基準となるリファレンス素子として、2Gyの照射(校正照射)を行なったものと、無照射のバックグラウンド用素子があります。バックグランド素子は自然界からの被ばくや運送時の被ばく等の影響を考慮するためのものです。

A-4. 調査セットの送付

施設へIMRT郵送調査セットを送付します。

A-5. 計画用ファントムの治療計画用CT撮影(依頼施設対応)

治療計画作成のため計画用ファントムの撮影を実施してください。

A-6. 治療計画の実施(依頼施設対応)

得られたCT画像から治療計画を実施し、評価点線量評価用計算データの出力、線量分布評価用計算データの出力、アイソセンターを通るAxial面の線量分布・アイソセンターの位置を示す画像の出力を実施してください。
評価点線量評価用計算データは、「IMRT郵送調査シート」へ記入して下さい。

A-7. 照射用ファントムへの照射(依頼施設対応)

治療計画が完成した後、立案した照射プランを照射用ファントムに照射ください。

A-8. 濃度-吸収線量変換テーブル用フィルムへの照射(依頼施設対応)

照射手順に従い、濃度-吸収線量変換テーブル用フィルムへ照射ください。

A-9. 調査セットの返送(依頼施設対応)

ファントム、およびフィルムの照射完了後、当センターへ調査セットを返送して頂きます。

A-10. メールでのデータ送信(依頼施設対応)

「IMRT郵送調査シート」、「線量分布評価用計算データ」、「アイソセンターを通るAxial面の線量分布・アイソセンターの位置を示す画像」をメールに添付の上、線量校正センター業務管理係まで送付ください。尚、メールでの送付できない施設の場合、申込時にご相談ください。

A-11.プレヒート処理

照射用ファントムから蛍光ガラス線量計素子を取り出し、放射線が照射された蛍光ガラス線量計素子の蛍光成分を安定させるために、70℃で30分間プレヒート処理を行います。

A-12.読み取り

プレヒート処理の翌日に、読み取り装置で蛍光ガラス線量計素子の出力を読み取ります。 読み取り装置は、0.01mGyから10Gyまで測定可能です。蛍光ガラス線量計素子は読み取り方向(位置)による差が生じるため、同じ方向(位置)で読み取るように注意します。また、繰り返し測定により測定誤差を抑制します。 蛍光ガラス線量計素子は、アニールするまで繰り返し読み取ることが出来ます。

A-13.解 析

読み取りで得た出力値は、蛍光ガラス線量計素子間の感度補正、エネルギー依存性の補正、水ファントムへの換算などの各補正を行い、治療用放射線治療装置で投与される吸収線量を算出します。また、施設の放射線治療計画装置で計算された吸収線量との相違を検証いたします。 解析後に報告書を作成・発送します。