財団概要
設立趣旨
近年日本など先進国において死亡原因の首位となっている各種のがんの治療については、早期発見法の進歩により、かなりの治療成果を見るにいたっている。しかしながら、なお一部のものについては、治療成績はこの半世紀の間、顕著に進展しているとはいえない。
各国で政府や各支援組織に支えられて、多くの研究者が、がん研究に真剣な努力を続けているなかで、原子力の技術開発から生まれた原子炉や加速器で発生させた粒子線等の各種放射線を、先端技術を利用して高精度に患部に照射・吸収させることにより正常組織への影響を抑えつつ、がん組織を破壊する新しい治療法が開発され、すでに一部、臨床に応用されている。
しかしながらこれらの新しい治療法については、症例数の不足もあって、まだ健康保険の適用は期待できず、また粒子線発生装置あるいは病床など、それぞれ専門分野・所属組織も多岐にわたるため、関係者の熱意ある努力にもかかわらず、治療研究の実施や技術の普及にあたっては、多くの障害や困難を抱えている。
一方、短寿命核種や放射線を用いた各種疾病の診断にも原子力技術は大きな貢献を果たしており、これらの手法についても今後一層の改善と発展が期待されている。
このような状況に鑑み原子力の技術を用いて行われる粒子線等によるがんを初めとする各種疾病の診断・治療に関して、その利用研究の推進と国民への啓蒙普及、関係組織間の連絡調整、また、治療実施のための調査・研究等を行うため、ここに本財団を設立し、もって科学技術の振興と人類の福祉向上に資することとした。